色々あって面白い、今月の月名〔5月〕
毎月の和風月名やその他の異名、各国の月名をご紹介するこのコーナー。
今回が第6回目で折り返しになります。
時々じんわりと汗ばむ5月は、旧暦では夏の中盤です。
そんな「5月」に名づけられた月名をご紹介していきます。
英語で5月は『May(メイ)』といいます。
この名称には、ローマ神話における春と豊穣を司る女神『Maia(マイア)』に関連しています。
マイアの祭日は5月1日で、この日にマイアに供物を捧げて豊穣を願う祭りを行っていました。
「マイアに捧げる月」であることから、ラテン語で5月を「Maius(マイユス)」と呼び、これが由来にあたります。
ちなみに5月1日は現在、世界各地で行われている労働者の祭典「May Day(メーデー)」にも転化しています。
「Maius」は他の言語の「5月」の由来にもなっており、フランス語では『mai(メ)』、スペイン語では『mayo(マヨ)』、ドイツ語では『Mai(マイ)』、イタリア語では『maggio(マッジョ)』といいます。
日本の旧暦では『皐月(さつき)』と呼び、同じ読み方で『五月』とも書きます。
「さつき」という名称の由来は諸説あり、稲の苗である「早苗(さなえ)」を田へ植える月であることから『早苗月(さなえづき)』が短くなったという説、「早苗」は本来「小苗(ささなえ)」で『小苗月(ささなえづき)』から来た説、古語では「佐」に「田植え」の意味があることから「田植えの月」として『佐月(さつき)』と呼んだ説などがあります。
「皐月」という漢字は後に当てはめられたものです。
中国最古の類語辞典である『爾雅(じが)』では、5月について「五月為皋(五月を皋と為す)」と書かれています。
「皋」は「皐」の元になった漢字であり、日本に伝わった際に「皐月」に当てはめられたと考えられます。
和風月名以外の異名
旧暦5月は新暦でいうと5月下旬から7月上旬辺りで梅雨の時期に被ることから、雨と関連のある名前が見られます。
また、五節句の一つ『端午の節句(たんごのせっく)』もあり、それに因んだ異名もあります。
稲作農業において大切な田植えが全国的に始まる5月。
そんな「稲の苗を植える月」という意味で呼ばれます。
新暦では陽気な日が続いていますが、旧暦では梅雨の真っただ中。
そんな「雨の月」を表している名前です。
梅雨の時期である旧暦5月に降る長雨のことを「五月雨(さみだれ)」と呼びます。
「五月雨が見られる月」であることから名づけられました。
五月雨のせいで、5月の間は雨が続きます。
そのため「月が隠れて見える日が少ない」ことから名づけられました。
日本固有の柑橘種である「橘」は、葉が一年中落葉せずに緑であることから、神秘的な植物として古くから愛されてきました。
そんな「橘の花が咲く月」であることから呼ばれています。
夏の真っ盛りに吹雪だなんて・・・と感じるかもしれません。
これはウツギの花である「白い卯の花を雪に見立て、風で散る花吹雪が見られる月」を表しています。
5月5日の端午の節句は、元は中国から伝わった「端午節」という行事です。
端午節では厄除けとして、中国の五行に基づいた「青(緑)・赤・黄・黒・白」の五色の糸を使って、ちまきを巻いたり、香袋が作られたりします。
日本ではこいのぼりの一番上に揚げられる「吹き流し」にも使われていますね。
この「五色」に基づいて名づけられたといわれています。
日本の端午の節句には、厄除けに「菖蒲湯(しょうぶゆ)」に浸かる風習があります。
これは古代中国で行われた端午節の風習に則っており、古い文献によると「蘭を蓄え沐浴を為すなり」という記述が見られるのです。
また端午節を「浴蘭節」と呼ぶこともあることから、5月の異名になったといわれています。
古代中国では様々なものが五行説に結びついており、十二支や12ヶ月などが配されています。
中国の伝統音楽で使われる「十二律」も例外では無く、五行説に当てはめていくと5月は「蕤賓」が該当します。
星座の「北斗七星」は、明るく目立つことから古来様々な指標に使われてきました。
北斗七星は冬至の頃になると、柄杓型の柄の先部分が真下(北の方角)を指します。
この方向は十二支の「子」の方向であり、以降毎月柄の先部分は違う方向を指します。
これを十二支の順番に辿っていき、旧暦5月には「午」の方角を指すことから名づけられました。
旧暦では雨の時期の5月は、新暦と比べると一番季節の違いが顕著な気がします。
名前によってガラリと月の印象が変わってしまうのは面白いですね。
さて、来月は1年の後半戦の6月です。
どのような異名があるのか楽しみですね。
各月の月名紹介
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