その肥満、ただの肥満と思うなかれ。生活習慣病に繋がっていくメタボリックシンドローム。
私の知人に昔はとても痩せていた人がいます。
身長は高めで筋肉もそこそこついており、太り気味の私からしたら羨ましい限りでした。
それから数年の月日が経ち、最近その人を見て気になるのはポッコリと出たお腹…
しかし全体的に「明らかに太い・・・!」といった印象ではありません。
曰く、その人は健康診断で「メタボリックシンドローム」の予備軍のため、生活習慣の改善が必要であると診断されたそうです。
私たちの生活で一般的になってきた「メタボリックシンドローム」とは一体どのような状態なのでしょうか。
メタボリックシンドロームに繋がる肥満の種類と共にご紹介します。
皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満
「正常な状態に比べて体重、あるいは脂肪が過剰に蓄積された状態」を私たちは『肥満(ひまん)』と呼びます。
肥満は蓄積された脂肪の種類ごとに『皮下脂肪型肥満』と『内臓脂肪型肥満』の2種類に分類されます。
■皮下脂肪型肥満
『皮下脂肪(ひかしぼう)』は「皮膚と筋肉の間につく脂肪」のことで、皮膚がある全身のあらゆる部分につきます。
主に太ももやお尻などにつきやすく、これが蓄積されすぎると「皮下脂肪型肥満」と診断されます。
■内臓脂肪型肥満
『内臓脂肪(ないぞうしぼう)』は「胃や腸などの筋肉の下、内臓の周りにつく脂肪」のことを指します。
人間の内臓は腹部に集中しているので、内臓脂肪がついているとお腹がポッコリと出ていることが特徴です。
蓄積されすぎると「内蔵脂肪型肥満」と診断されます。
これらの肥満の度合いを簡易的に判断するには「体脂肪率」や「BMI」を用いるのが一般的です。
■体脂肪率
皮下脂肪と内臓脂肪の両方をまとめて『体脂肪(たいしぼう)』と呼び、体重に対しての体脂肪の割合を表したものが『体脂肪率』です。
以下の図式で算出します。
一般的に男性だと「20%以上」、女性だと「30%以上」になると「肥満」と判断されます。
■BMI
「Body Mass Index」の略で身長と体重から算出する人間の体格指数のことです。
以下の図式で算出し、肥満度の分類に当てはめます。
BMI | 判定 |
18.5 未満 | 低体重 |
18.5 から 25.0 未満 | 普通体重 |
25.0 から 30.0 未満 | 肥満(1度) |
30.0 から 35.0 未満 | 肥満(2度) |
35.0 から 40.0 未満 | 肥満(3度) |
40.0 以上 | 肥満(4度) |
※「肥満度の分類」は『日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」』を元に作成
メタボリックシンドロームの診断と危険性
『メタボリックシンドローム』とは「内臓脂肪型肥満」であることと「脂質異常」「高血糖」「高血圧」のうち複数が該当している状態のことです。
これは心臓病や脳卒中などになりやすい状態のことを指します。
たまにお腹が大きい人を「メタボ」と呼ぶ人がいますが、それだけではメタボリックシンドロームには該当しません。
「内臓脂肪型肥満」はCTスキャンでおへその位置を測定した際、内臓脂肪の面積が100㎠以上だった場合に診断されます。
機械を使わない簡易の方法では、おへその高さの「腹囲」を測定し、男性は「85cm以上」、女性は「90cm以上」だと内臓脂肪型肥満である可能性が高いといえます。
「脂質異常」「高血糖」「高血圧」は、下記の基準で判断されます。
脂質異常 | 中性脂肪(トリグリセリド) かつ / または 善玉コレステロール(HDLコレステロール) | 150mg/㎗ 以上 40mg/㎗ 以下 |
高血糖 | 空腹時の血糖値 | 110mg/㎗ 以上 |
高血圧 | 収縮期血圧(最高血圧) かつ / または 拡張期血圧(最低血圧) | 130mmHg 以上 85mmHg 以上 |
メタボリックシンドロームの診断基準の根本に「内臓脂肪型肥満」の該当の有無があるのは、内臓脂肪の役割に関係があります。
そもそも「脂肪」というものは、私たちが日々の活動で消費する量よりも余分に栄養を摂った時に作られます。
これが小腸や大腸などの内臓の周りにある脂肪組織に蓄えられると「内臓脂肪」となります。
内臓脂肪は皮下脂肪に比べて分解頻度が早く、分解されると血液中に中性脂肪を放出します。
内臓脂肪の量が多ければ多いほどこの放出頻度も増え、血中の中性脂肪量が増えていきます。
血中の中性脂肪が増加すると、良い働きをする善玉の「HDLコレステロール」が減少し、悪い働きをする悪玉の「LDLコレステロール」が増加します。
これがメタボリックシンドロームの診断基準の一つ『脂質異常』の状態です。
また、脂肪組織は「アディポサイトカイン」というホルモンを分泌しています。
このホルモンには血液中の糖質や血圧をコントロールする様々な物質が含まれています。
内臓脂肪が増えるとアディポサイトカインの分泌量に異常が発生し、糖質を調整するインスリンの働きが悪くなって『高血糖』になったり、血圧を上昇させてしまい『高血圧』になります。
これらの症状が合併して動脈硬化が進み、最終的に糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などを発症します。
メタボリックシンドロームの改善
メタボリックシンドロームの改善には、その上流の原因である内臓脂肪型肥満を改善することが必要です。
内臓脂肪型肥満の主な原因は「食事バランスの乱れ」と「運動不足」です。
日々の消費するエネルギー量よりも摂取するエネルギー量が多くなることで、内臓脂肪が蓄積されていきます。
また加齢に伴い消費するエネルギーは減少傾向にあるので、若い時と同じ生活を送っているといつの間にか内臓脂肪が蓄積されてしまうこともあります。
ただ、同じ脂肪である皮下脂肪よりも蓄積されやすい内臓脂肪は、消費されやすいという特徴もあるため、原因にきちんと向き合えば早期の改善が期待できます。
食事の面では日々のメニューや食べ方などを見直してみましょう。
現代の食事はファストフードや揚げ物、お菓子やお酒などカロリー・糖質・脂質の高いものが多め。
座り仕事の多い現代の日本人だと一日の摂取カロリーは、成人男性は「2000~2400カロリー」、女性は「1400~2000カロリー」程度を目安にしましょう。
また食べすぎを防ぐために満腹になるまで食べずに腹八分目に抑える、早食いをせずに時間をかけてゆっくりと噛んで食べるなどの工夫をしましょう。
食事の献立は、メタボリックシンドロームと診断された時に当てはまった症状によって気にするべき内容は異なります。
専門の医師に食事の内容や気を付けるべき点などを相談してみてください。
同時に、消費するエネルギー量を増やすため、まずは毎日今より10分多く身体を動かすことから始めてみましょう。
今まで運動の習慣が無かった人は、急に無理な運動を始めると体に大きな負担がかかり逆に危険です。
仕事などで十分に時間を作ることが難しい場合は、通勤時に10分多く歩くことから始めてみてはどうでしょうか。
また筋肉量が増えると日々の消費されるエネルギー量も増えていきます。
スクワット・腕立て・腹筋・プランクなどの自分の体重の負荷で行う「自重トレーニング」で筋肉量を増やすことも目指してみましょう。
この時、負荷が強すぎてしんどくて続かないのであれば意味がありません。
自分が無理をせず続けられる範囲を目安にしましょう。
メタボリックシンドロームは長い生活習慣の積み重ねの結果で起こる状態です。
そのため1~2日程度では改善することはできません。
しかし、同じように毎日続けていれば積み重ねの結果で必ず改善を見込めます。
様々な病気や体の不調を改善するためだけでなく見た目の魅力も上がり、メリットだらけです。
まだメタボリックシンドロームと診断されていない場合でも、予備軍になってしまわないように今一度自分の生活を見直してみてはいかがでしょうか。
出典:
日本肥満学会 「肥満症診療ガイドライン2016」
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