形や意味が崩れていく。ゲシュタルト崩壊と意味飽和。
私たちが目や耳で認識するとき、脳の中では様々な働きが行われています。
外部の刺激を通して認識する働きを「知覚」と呼びますが、時として、この知覚が正常に働かなくなることがあります。
今回はそんな知覚で発生する現象をご紹介します。
形の認識にズレが生じる「ゲシュタルト崩壊」
例えば、同じ文字を長時間眺めているときや何度も同じ文字を書いているとき、その文字の形に違和感を覚えたことはありませんか。
段々と文字を構成する形が崩れるような、一つの文字として見ることができなくなるような感覚。
「あれ?この文字ってこんな形してたっけ?」とふと思う瞬間です。

この現象を心理学の分野では『ゲシュタルト崩壊(ゲシュタルトほうかい)』と呼びます。
ゲシュタルト崩壊に関連する心理学の分野に『ゲシュタルト心理学(ゲシュタルトしんりがく)』があります。

『ゲシュタルト』とは、ドイツ語で「形態」や「状態」を表す言葉です。
ゲシュタルト心理学では、人間は個別の物体の集合体を見たとき「個々が集まったもの」と考えずに「集まって出来上がった別のもの」と認識するという考え方をします。
人間の精神を部分や要素が集まったものではなく、一つのまとまりとして重点を置いて考えるとき、このまとまりの構造を「ゲシュタルト」と呼びます。
ゲシュタルトの構造の分かりやすい例は、音楽のメロディです。
メロディは、一つ一つの音が連なって出来ています。
しかし、私たちはそのメロディを「個々の音」としては考えず、「ひとまとまりの音楽のメロディ」というゲシュタルトとして認識しているのです。

さて、本題の「ゲシュタルト崩壊」は、このゲシュタルトが崩れてしまうという現象です。
ゲシュタルト崩壊を起こしやすいものとしてよくあげられるのは「漢字」です。
下記の漢字の羅列を見てみてください。
借借借借借借借借借借借借借借借借借
借借借借借借借借借借借借借借借借借
借借借借借借借借借借借借借借借借借
借借借借借借借借借借借借借借借借借
借借借借借借借借借借借借借借借借借
借借借借借借借借借借借借借借借借借
借借借借借借借借借借借借借借借借借
「借」という漢字を並べたものですが、ジッと見続けていると「借」という漢字はこんな形だっただろうか・・・と感じてきませんか。
元々漢字は、いくつかの象形が組み合わさって出来たものです。
そのため、部分的に形や文字を区切ることができるので、文字のまとまりがバラバラに見えてしまうことが起こりえるのです。

他にも一定の羅列になっている幾何学模様や人の顔などの視覚的なものが有名ですが、同じメロディを聞き続けているとバラバラに聞こえたり、同じ食べ物を食べ続けていると味に違和感を感じてきたりするのもゲシュタルト崩壊だといわれています。

言葉の意味が分からなくなる「意味飽和」
ゲシュタルト崩壊の話題の中で聞くことが多いのは、「文字を見ているとその文字がどういう意味だったか分からなくなる」という事例です。
一見すると文字のゲシュタルト崩壊のように思えますが、実はこの現象はゲシュタルト崩壊とは別物なのです。
下記は、野菜の茄子を指す「なす」という文字の羅列です。
なすの文字を見ながらぼんやりと野菜を思い浮かべ、思い浮かべた野菜を表すのがなすである・・・と何度も反復してみてください。
なす なす なす なす なす なす なす なす
なす なす なす なす なす なす なす なす
なす なす なす なす なす なす なす なす
なす なす なす なす なす なす なす なす
なす なす なす なす なす なす なす なす
なす なす なす なす なす なす なす なす
そのうちふと「なすってどういうものだったっけ?」と感じることがあります。

これは『意味飽和(いみほうわ)』と呼ばれる現象で「同じ文字や語を長時間凝視したり、何度も繰り返していると、次第にその意味が減じられてしまう」というものです。
こちらはもっぱら文字や言葉に対して起こる現象で、単純で何気ない文字の方が起こしやすいといわれています。
病気なわけではない?発生する原因と対処
ゲシュタルト崩壊と意味飽和、どちらも形や意味など理解していたことが分からなくなる現象です。
こう聞くと「現象が発生した自分は病気なのではないか」と心配になるかもしれませんが、どちらも詳しい発生原因は分かっていません。
ただ、どちらも短時間の一時的な現象であることから、原因の一つとして「反復による脳の疲労や慣れ」といわれています。
私たちは知覚をするとき脳細胞が働くので、思っている以上にエネルギーを必要とします。
ゲシュタルト崩壊だと、個々のものをまとめて捉えて認識する処理、意味飽和だと、文字や言葉の意味を記憶から思い出す処理が発生します。
これらを何度も同じものに対して実行していると、脳が疲れて反応が鈍くなったり、疲れないように処理を抑制したりするのです。
こうしてゲシュタルト崩壊と意味飽和が発生してしまうのです。

自然に発生してしまうのであればしょうがないと思えますが、仕事の最中などに発生すると支障をきたすので困ってしまいますね。
どうにかして早く戻したい場合の対処としては『反復している作業にメリハリをつける』と良いといわれています。
ずっと同じ文字を見たり書いたりしている場合は、脳が疲労していることも多いので、一度目を閉じたり、数分手を止めてみたりします。
ゆっくりと深呼吸をするだけでも効果的です。

また、黙々とその作業を続けている場合は、脳が慣れてしまっていることも考えられるので、声に出してみたり、分からなくなった文字や単語を辞書やweb検索で確認するのも手です。
作業の順番を変えてルーティンを崩したり、動作のスピードを上げてみたりして、ぼんやりとした脳をリフレッシュしてあげましょう。

どちらにしても焦らずに、ゆっくり着実に対処することを意識してくださいね。
ゲシュタルト崩壊も意味飽和も人によって発生頻度や確率が異なり、しょっちゅう起きる人もいれば全く起きない人もいるそうです。
人間の脳は複雑な分、まだまだ未解明や未発見の現象がありそうですね。
逆に自分に現象が発生しても、その状況を楽しめるぐらいの心持ちでいましょう。
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