舞妓さんの髪を着飾る引き立て役。季節を告げる華やかな花かんざし。
日本を代表する観光地の一つ、京都。
そんな京都の花街では、舞踏などの芸で興を添えてくれる「舞妓」が欠かせません。
舞妓には伝統の衣装がありますが、特に目を引くのは髪に挿した大きな「花かんざし」です。
花かんざしはただ着飾るだけでなく、花街で季節の移ろいを感じさせてくれる存在でもあります。
今回は、舞妓が身に着ける「花かんざし」についてご紹介します。
細やかな細工が特徴的な花かんざし
『かんざし(簪)』は日本の伝統的な髪飾りで、結ってまとめた髪束に挿して使います。
当初は木や動物の骨で出来た一本の先の尖った細長い棒状のものでした。
また着飾ることが目的ではなく、魔を払う呪術的な意味合いが強かったのです。
時代が進むにつれて、髪飾りの概念や髪形の変化に伴い、様々な素材・形状・デザインのかんざしが作られてきました。
数あるかんざしの一つに『つまみかんざし』と呼ばれる物があります。
小さな四角に切った布をピンセットでつまんで折りたたみ、重ねて花のようにして飾ったかんざしです。
そのモチーフの形から『花かんざし(はなかんざし)』とも呼ばれます。
繊細で美しい細工は、まさに職人技。
華やかな見た目なので、現在では七五三や成人式、結婚式の髪飾りとしても重宝されます。
舞妓の花かんざし
髪を艶やかに引き立ててくれる花かんざしは、舞妓にとって必要不可欠なアイテムです。
しかし、ただ好きなものを身に着けるのではなく、舞妓になった年数に合わせて見た目が大きく異なる花かんざしを身に着けます。
舞妓になって1年未満は、小さな花がたくさんついた花かんざしを身に着けます。
また、顔の横位置に垂れ下がるように「ぶら」と呼ばれる飾りが付けられます。
かつて舞妓は、10歳から13歳ぐらいの子供がなるものでした。
そのため、派手で華やかな花かんざしを身に着けることにより、幼く可愛らしい姿を印象付けていたのです。
そして、段々舞妓としての年数を重ねていくとぶらが取れ、花が大きくシンプルなものへと変化していきます。
その移り変わりは、あどけなさが残る姿から落ち着いた雰囲気へと大人に成長していくかの様。
花飾りが少なくとも、魅力や技術を持っているという実力の証なのです。
季節を告げる花かんざし
季節によって咲く花が変わるように、舞妓は月ごとに決まった花かんざしを身に着けます。
花かんざしは、花街で四季の移り変わりを表してくれる趣深い存在なのです。
そんな花かんざしの毎月の移り変わりを見てみましょう。
一年の始まりである一月は吉祥のシンボルである『松・竹・梅』や『鶴』などの縁起物、花では『寒菊』などがあしらわれます。
また、京都の花街は元日から15日までが松の内でお正月になります。
この期間には、本物の『稲穂』と『目の無い白い鳩』のかんざしがつけられます。
稲穂には「稲穂のように頭を下げて謙虚に生きる」という意味が込められています。
鳩は幸福の象徴であり、ご贔屓さんに目を描いてもらうことにより「目が出る」=「出世する」という習わしがあります。
また、好きな人に目を描いてもらうと、願いが成就するという言い伝えもあるそうです。
二月の花は、縁起も良く春の始まりを告げる『梅』です。
紅・白・ピンクなどの鮮やかな色の対比が、これから暖かくなる季節を表しているかのようです。
また、立春の前日の節分には「節分お化け(せつぶんおばけ)」と呼ばれる行事があります。
この日は厄払いを込めて、芸妓が男装などの仮装をしてお座敷を回るのです。
舞妓のかんざしも行事の期間に合わせて、遊び心が見える『くす玉』や『かざぐるま』があしらわれます。
暖かさを感じ始めるこの季節には、明るい印象を与える『菜の花』や存在感のある『水仙』が取り入れられます。
菜の花には小さな蝶が止まっていることも。
ひな祭りに因んで可愛らしい『桃』があしらわれることもあります。
春本番の四月には、日本の代表的な花である『桜』があしらわれます。
一口に桜と言っても、濃いピンクや薄いピンク、淡い白など色合いも様々です。
花だけでなく、歌舞伎の曽我物で曽我五郎が着用していた蝶柄に因んだ大きな『五郎蝶(ごろうちょう)』のかんざしをつけることもあります。
そろそろ夏へと移り変わるこの時期には、落ち着いた薄紫の『藤』が見られます。
藤は下に垂れるように咲くので、ぶらがないかんざしでも縦に長いデザインになります。
落ち着いた雰囲気になる大ぶりな『あやめ』も取り入れられます。
花が多い中、梅雨の暗い空にも緑が映える『柳』がメインになる月です。
アクセントとして撫子を一緒にあしらわれることもあります。
この時期に咲く『紫陽花』のかんざしも、憂鬱な気分をしっとりと和らげてくれます。
夏真っ盛りの七月。
祇園では夏の挨拶に、舞妓から得意先の店に団扇を配る風習があるので『団扇』がモチーフになったかんざしをつけます。
また、京都三大祭りである祇園祭には、お祭りに因んで『金魚』や『花火』などがあしらわれたかんざしを身に着けます。
旧暦では秋に入る八月は、まるで銀色の花のように見える『すすき』があしらわれます。
まだ暑さが残る時期に少し涼しげな『朝顔』も様になります。
秋の七草に数えられる『桔梗』と『萩』のモチーフになります。
残暑と初秋が入り混じる九月に涼しさを届けてくれるかのようです。
十月は秋の代表的な花である『菊』を飾り付けます。
愛くるしい小菊や存在感のある大きな一輪の菊など、バリエーションも様々です。
秋に鮮やかな赤や黄色に紅葉する『もみじ』と『いちょう』が主役になります。
一気に秋が深まった印象ですね。
十二月には、歌舞伎で役者交代後に初めて興行する「顔見世(かおみせ)」が行われます。
この顔見世を花街の全ての芸妓と舞妓が揃って観劇するのが「顔見世総見(かおみせそうけん)」です。
行事に合わせて、舞妓は松や竹などの土台に『まねき』と呼ばれる役者の名前が書かれた木の札が付いたかんざしを身に着けます。
初めは何も書かれていませんが、顔見世総見の時に舞妓がご贔屓の歌舞伎役者の楽屋へ赴き、直接名前を書いてもらうのです。
正月の縁起物を先取りして『もち花』もあしらわれます。
ちなみにまねきの花かんざしの時には、キャリアにかかわらず、ぶらは付きません。
季節によって花かんざしはガラリと姿を変え、四季の印象に合ったものへと変化していきます。
また同じ月でも、ぶらの有り無しや花の大きさによって雰囲気が変わるのも風情があって良いですね。
残念ながら、舞妓の花かんざしは、舞妓の髪形に合うように大きく作られた特注品なので、一般の人が手に入れることは出来ません。
しかし、最近では一般の人も手に入れやすい大きさ・価格の花かんざしを販売している店もあります。
和服だけではなく意外と洋服にも合い、簡単に身に着けることができるので、舞妓と同じように季節に合わせて花かんざしを楽しんでみるのも良さそうです。
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