今が「旬」なたべものたち 《銀杏》

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ようやく気温が落ちてきて、紅葉が始まり出しました。
紅葉の代表格である植物のイチョウの葉が黄色くなる頃に地面に落ちている黄色い果実。
臭いが強烈なその実の中から採れるのは、ほろ苦さが特徴の「銀杏」です。
今回は秋を連想させるたべもの「銀杏」についてご紹介します。

 

銀杏ってどの部分?

『銀杏(ぎんなん)』とは、本来はイチョウの果実の種子のことを指します。
私たちが普段食べている銀杏は、その種子の中にある『胚乳(はいにゅう)』と呼ばれる部分です。
胚乳は種子から植物へと生長するために必要な栄養が詰まっています。
私たちが普段食べているお米も稲の種子の胚乳にあたります。

銀杏の元になるイチョウは『雌雄異株(しゆういしゅ)』と呼ばれる性で、一つの木で種子と花粉を生産するのではなく、種子を生産する「メスの木」と花粉を生産する「オスの木」に分かれて成長します。

オスの木から飛んだ花粉を受粉したメスの木は果実を実らせ、早くて9月頃から黄色く成熟し始め落果します。
この果実の果肉の部分を取り除き種子だけにしたものが、私たちがよくお店で目にする銀杏です。

 

手に入れるまでがとっても大変な銀杏

イチョウは病気に強く様々な環境下でも生長するので、公園や街路樹によく植えられています。
もちろんそのイチョウの実も種子を取り出せば、お店で売られているものと同じように銀杏として食べることができます。
しかし銀杏を手に入れるにあたって、一番大変なのがその種子を取り出す作業なのです。

イチョウの実の表面には乳白色の液体が染み出ています。
液体にはギンコール酸ビロボールといった、ウルシのようにアレルギー性皮膚炎を誘発する成分が含まれています。
そのため、素手で触り続けていると強いかゆみを伴うかぶれを引き起こすことがあります。

さらに大変なのは、あの何とも言えない強烈な臭いです。
イチョウの果実の皮には『酪酸(らくさん)』『エナント酸』と呼ばれる成分が含まれています。
「酪酸」は蒸れた足から発せられる悪臭の原因の一つで、「エナント酸」は腐った油の臭いの成分の一部です。
どちらも聞いただけでとんでもない臭いがするのが想像できますよね。

手がかぶれないように、そして臭いが手につかないようにするためには、使い捨て出来るゴム手袋やビニール手袋などが必須になります。

 

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銀杏の栄養

銀杏は「デンプン」が豊富でエネルギー源となります。
目や皮膚の粘膜を正常に保つビタミンAになる「カロテン」や抗酸化作用のある「ビタミンC」も多く含まれています。
また「カリウム」「マグネシウム」などのミネラルも沢山含まれています。
近年では銀杏に含まれる「ギンコライド」が身体を温め、冷えからくる頻尿に効果があるといわれています。

しかし銀杏を食べる上で注意したいのが「4-O-メチルピリドキシン」という物質です。
この物質はアミノ酸の代謝を助けたり免疫機能を正常に保ったりする、体に重要な栄養であるビタミンB6と構造的に酷似しています。
大量に摂取すると身体がビタミンB6と間違えて取り入れようとしますが、同じ働きはしないため結果的に不足、ビタミンB6欠乏症による銀杏中毒が起こります。
吐き気や下痢・手足の震えや痙攣・めまいなどがみられることもあるため、あまり一度に食べ過ぎないようにしましょう。

 

銀杏を美味しく食べたい

食べ過ぎないように注意は必要なものの、銀杏は秋を感じる最高の食材です。
ぜひとも旬であれば食べておきたいものですね。
少しでも美味しく食べるために、購入する際には殻の表面が白くてツヤがあるものを選びましょう。
収穫から時間が経ったものは、殻の表面が黒ずんできます。
そしてなるべく大粒振っても「コロコロ」と中から音がしないものが良質です。
粒が大きいものは中の銀杏も大きく、音がしないものはしっかりと詰まっている証拠です。
新鮮な銀杏は綺麗な翡翠色をしており、時間が経つとどんどん黄色く変化していきます。

気軽に銀杏本来の味を味わいたいなら、電子レンジでの調理がおすすめ。
殻に軽く割れ目をいれておき、紙の封筒に入れて弾ける音がするまで様子を見ながら電子レンジで加熱します。
透明感のある色になったら、塩をかけて召し上がってください。

料理に使うなら殻を割って銀杏を取り出してから少なめのお湯で茹でます。
穴じゃくしを銀杏にあてて優しく転がすと、薄皮が破れて剥きやすくなります。
そうやって下ごしらえをした後は、ご飯と一緒に炊いて「銀杏ご飯」にするのがいいですね。

おつまみのように食べるのであれば、油で揚げるのもおすすめ。
焼くよりもほっくりとした食感がプラスされ、ついついお酒が進んでしまうかもしれません。

またミキサーなどで細かくすり潰したものを澄まし汁などで伸ばすと、風味豊かな「すり流し汁」になります。
銀杏の苦みを感じながらもとろみのある汁は、身体の隅々まで染み渡り、気持ちまでほっこりとします。

 

独特の風味や苦みがある銀杏ですが、その味の深みは一言では言い表せない魅力があります。
私はわりと酒飲みなので「銀杏をおつまみに日本酒を飲んだら最高だな・・・」などと考えてしまいます。
旬の銀杏は味わいが豊かなので「普段茶わん蒸しに入っているのが苦手」という人も美味しく感じるかもしれません。
ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

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