ロマンあふれる伝統の宝。皇位の証である三種の神器。

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皆さんは「三種の神器」という言葉を聞いたことがありますか。
家電がお好きな方だと「ドラム式洗濯機」「ロボット掃除機」「食洗機」と答えるかもしれません。
これは「持っていると生活が豊かになる理想的な電化製品」のことですが、本来の三種の神器とは別の物です。
では実際はどのような代物なのでしょうか。
今回は日本の伝統的な宝、三種の神器についてご紹介します。

 

神様から後の天皇へ授けた宝物

『三種の神器(さんしゅのじんぎ)』とは、日本神話に登場する「神様から授けられた三種類の宝の総称」です。
三種の神器は様々な資料に記述されており、日本最古の歴史書である「古事記(こじき)」「日本書紀(にほんしょき)」などにも登場します。
それぞれ記述や解釈が異なるので、ここでは古事記に記載されている内容でご紹介します。

「三種の神器」としての登場は「天孫降臨(てんそんこうりん)」の章で登場します。
日本神話の神様は、天上界「高天原(たかまがはら)」に住み、主神「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」を筆頭にした「天津神(あまつかみ)」
そして、地上の世界「葦原中国(あしはらのなかつくに)」に住み、主神「大国主神(おおくにぬしのかみ)」を筆頭にした「国津神(くにつかみ)」に分かれます。

天照大御神あまてらすおおみかみと世界が始まった際に現れた三神の一人とされる「高木神(たかぎのかみ)」は、天照大御神あまてらすおおみかみの子供である「天忍穗耳尊(あめのおしほみみのみこと)」が葦原中国を治めるべきだと考えていました。
しかし、天忍穗耳尊あめのおしほみみのみことが葦原中国に降りようとしたとき、「下界はとても騒がしいので自分では手に負えない」と拒否します。

紆余曲折があり、やがて国津神から天津神に葦原中国が譲られます。
今度こそ天忍穗耳尊あめのおしほみみのみことを降臨させようとしますが、国が譲られるまでには長い時間が経っていました。
その間に天忍穗耳尊あめのおしほみみのみことは、高木神たかぎのかみの娘「萬幡豊秋津師比売命(よろづはたとよあきつしひめのみこと)」との間に「瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)」を儲けます。

天忍穗耳尊あめのおしほみみのみことは「自身の子であり、天照大御神あまてらすおおみかみ高木神たかぎのかみの孫である瓊瓊杵尊ににぎのみことが治めるべきだ」と進言します。
こうして瓊瓊杵尊ににぎのみことは、葦原中国を治めるために降り立つことになります。
この時に天照大御神あまてらすおおみかみが、彼に授けたのが「三種の神器」なのです。

瓊瓊杵尊ににぎのみことは、日本の初代天皇である「神武天皇(じんむてんのう)」の祖先にあたります。
そのため三種の神器は皇位の権力を表すものとし、現代まで天皇の皇位と共に継承されてきたのです。
ちなみに三種の神器は全て天皇が所持しているわけではなく、一部の実物は神社の御神体として祀られており、皇位継承の際は神器に準じた「形代(かたしろ)」が使用されています。

三種の神器は実物も形代も大変神聖なものと考えられているため、直接見ることはタブーとされています。
受け継がれてきた天皇ですらも見たことが無いそうで、一体どんな姿をしているのかとても気になりますね。

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三種の神器、それぞれどんなもの?

三種の神器は「鏡」「玉」「剣」の組み合わせで構成されています。
この組み合わせは、古代日本から「支配者」の象徴であったと考えられています。
また中国から伝わった儒学における「智」「仁」「勇」の三徳を表しているともいわれています。

 

八咫鏡/やたのかがみ
鉄で作られた丸い大きな鏡として伝わっており、三徳の「頭が良く知識豊富なこと」である『智』にあたります。
「八咫(やた)」は一般的に「大きいもの」を表す言葉ですが、一説によれば「咫」を長さの単位と考えて「円周が八咫(約147cm)の鏡」を指しているともいわれています。

日本神話では「岩戸隠れ(いわとがくれ)」の章で登場します。
天照大御神あまてらすおおみかみの弟である「建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)」は高天原で度重なる暴挙を行い、ついには死者が出る事件が起こってしまいました。
弟の仕出かしたことを大変申し訳なく思った天照大御神あまてらすおおみかみは、「天岩戸(あめのいわと)」と呼ばれる洞窟に閉じ籠ってしまいます。

なんとか天照大御神あまてらすおおみかみに出てきてもらおうと考えた神様たちは、天岩戸の前で「天宇受賣命(あめのうずめ)」という神様に踊ってもらい、みんなで大笑いしました。
天照大御神あまてらすおおみかみは外が賑やかなのを訝しみ、天岩戸の隙間から外を覗いて「なぜみんなそんなに楽しそうなのか」と尋ねます。

天宇受賣命あめのうずめは「あなた様よりも尊い神様が現れたためです」と鏡を差し出します。
この鏡が八咫鏡です。

その後、鏡に映る自分を別の神様だと思った天照大御神あまてらすおおみかみが、よく見ようと岩戸を開けた所を引っ張りだされて岩戸隠れ事件は解決するのです。
瓊瓊杵尊ににぎのみことに授けた際には「この鏡を天照大御神あまてらすおおみかみだと思って祀りなさい」と命じています。

 

八尺瓊勾玉/やさかにのまがたま
「勾玉」はC字型に湾曲し、玉から尾が出たような形に加工された装身具の一種です。
玉の部分には穴が開けられ、紐を通して首飾りなどにされていました。
「瓊」は赤色の玉のことで、当時の状況から赤色のメノウで作られているとされています。
「八尺」「勾玉の丸い部分の大きさ」「尾までの長さ」、または「結わえてある紐の長さ」ともいわれています。
三徳では「他人に対する愛情や優しさ」である『仁』にあたります。

こちらも日本神話の「岩戸隠れ」で登場しています。
天岩戸の前で天宇受賣命あめのうずめが踊る儀式の前準備に、儀式が成功するかの占いを行います。
占いで「榊(さかき)が吉」と出たので、榊の木を根元から引っこ抜き、枝にこの八尺瓊勾玉や先ほどの八咫鏡・織られた白い布「布帛(ふはく)」などを掛けて御幣(ごへい)を作り、天岩戸の前に飾ったとされています。

ちなみに三種の神器の中で唯一、皇居に安置されているのが八尺瓊勾玉です。

 

草薙剣/くさなぎのつるぎ
別名「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」ともいわれる剣で、三徳の「恐れない心」である『勇』にあたります。
伝承によると、長さが約85cmの両刃の剣で、刃先が菖蒲の葉の形に似ているといわれています。
また、剣の中ほどが盛り上がっており、柄の部分は魚の脊骨(せきこつ)のように節があるといわれています。

日本神話に登場するのは、天照大御神あまてらすおおみかみの岩戸隠れ事件をきっかけに建速須佐之男命たけはやすさのおのみことが天上界を追放された後のこと。
「出雲国(いずものくに)」に降り立った建速須佐之男命たけはやすさのおのみこと「櫛名田比売(くしなだひめ)」という美しい乙女に出会います。
しかし彼女は、8つの頭と8本の尾を持つ巨大な蛇「八俣遠呂智(やまたのおろち)」に生贄にされそうになっていました。

建速須佐之男命たけはやすさのおのみこと櫛名田比売くしなだひめを助けるために八俣遠呂智やまたのおろちを退治します。
この時、八俣遠呂智やまたのおろちの尾から見つかったのが草薙剣です。

「草薙」と名前に付くのは諸説あり、瓊瓊杵尊ににぎのみことの子孫である「倭建命(やまとたけるのみこと)」が、敵の放った野火に囲まれてピンチになった際「草を薙ぎ払って」向かい火を付け、脱出するのに使われたため名づけられたといわれています。

 

今回は古事記を元にご紹介しましたが、他の歴史書や資料・地域の伝承にはまた違った内容が語り継がれています。
しかし共通して言えるのは、三種の神器に実用的・精神的、はたまた宗教的など様々な事柄を象徴しているものであり、その存在自体に神秘的な魅力があるということです。
今でも謎が多い三種の神器ですが、様々な説話を紐解くと知らなかった一面を見ることができます。
皆さんも物語を通して歴史のロマンを感じてみませんか。

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